神楽との出会い
日野高校へ入学してから「海外へ行けるチャンスもあるよ!」という言葉につられて、郷土芸能部の見学に行ったことが神楽との出会いでした。先輩がオロチを操っている姿がとてもかっこよく圧倒されたことを今でも覚えています。
入部してからは、台湾や韓国での公演も実現し、スサノオのオロチ退治が題材の演目『八重垣能』で太鼓やオロチを担当し、3年で部長になると稲田姫の役も演じるようになりました。卒業して社会人になっても、「また神楽をやりたい」という、ふつふつとした思いがずっとあり、そして周りに神楽を知らない人も多かったこともあって、2011年に「鳥取荒神神楽研究会」を立ち上げました。
神楽を知ってもらいたい!
とりアート2012展示の様子(写真右が徳林さん)
伝統芸能である荒神神楽は、担い手の減少や認知度不足などさまざまな問題を抱えています。もっと神楽の魅力を多くの方に知ってもらいたく、研究会では、神楽の研究や県内各地での神楽公演の増加、伝承と担い手の増加、神楽と神話と史跡を連動させた神話観光ツアー作りなどの目標を掲げ、現在5名で活動を展開しています。
現在は、神楽との関わりが深い神話を学ぼうと月1回、古事記研究家で、古代出雲王国研究会代表の多羅尾整治氏を講師に古事記を勉強する「古事記座談会」を開催しています。また、最近では古事記の大国主命の再生神話の舞台とされる、南部町にある赤猪岩神社近くの清水井の水で田植えをしながら神楽を披露しました。
清水井での神楽の様子
そして神楽団の結成へ
研究会設立後、江府町の下蚊屋荒神神楽保存会明神社(県指定無形民俗文化財)に通っては、練習の様子を見させていただくなど指導を仰いでいましたが、研究会の活動をする中で周囲から「神楽はやらないの?」という声が挙がってきました。そのような機運の盛り上がりもあり、研究会設立から2年後の2013年7月に神楽団を結成し、同年9月には初舞台を踏みました。現在では、県西部の20代から30代の若者7名が集まって、週に2回程練習を重ねています。
また、研究会の活動を通して、観光客や神楽を知らない方が集中して見ていられるのは長くても15分であるということが分かりました。そこで短時間の演目を中心にレパートリーを増やし、神楽を知らない方にも分かりやすく楽しく知ってもらうきっかけになったらと思って神楽団の活動をしています。
研究会立ち上げから早3年
幸いなことに初舞台以降には多くのメディアに取り上げていただき、少しずつ研究会の認知度も高まり、神楽団の出演機会も各地で増えてきました。いろいろな出会いにも恵まれ、多くの方の支えがあって、ここまで活動を続けることができたのだと思います。
これからは、演目を増やして、観光イベントにも参加するなど研究会の活動が地域活性化につながると嬉しいです。
郷土芸能が、皆の心のよりどころであって欲しいと思っていますし、地元の誇りです。ぜひ地域の郷土芸能に目を向けて欲しいです。そして興味が湧いたら、一緒にやってみることをおすすめします。もちろん神楽をやってみたい!と思われる方も募集中です。いつか、こども神楽も作ってみたいなと夢は膨らみます。
地元の南部町では“おせの背中を魅せよう*”というスローガンがあるのですが、この言葉を大切にこれからも活動を続けていきます。
清水井神楽田植えの様子(写真右が徳林さん)
*地域の大人が、自らの立ち居振る舞いを振り返り子どもたちに手本となる姿を示していこうとする取り組み