コンサートや舞台がはねたあとの、がらんとした会場を、客席の一番後ろから眺めるのが好きです…。
実際にオーケストラや演劇など、文化関係のイベントを主催する立場にいる者として告白すると、正直、運営は苦痛です。チケットの売れ行きに眠れぬ日々を過ごし、売れたら売れたで当日の会場や周辺の混雑が気になります。そして当日はというと、受付で、あるいは楽屋で裏方に徹しているわけで、すばらしい演奏を聴くことなど夢のまた夢。運営スタッフとは、まさに「芸術に最も近くて遠くにいる人たち」なのです。
そんなかわいそうなスタッフを癒してくれるのが、会場外に漏れてくる歓声と、満足したお客様の顔。お客様の幸せそうな姿に、一気に疲れは吹き飛び、辟易していたはずなのに、「またやろう!」と次への気力が沸いてくるから不思議です。一流の芸術は、直接、間接に人々を癒し、力を与えてくれるのです。
静寂を取り戻した会場で、確かにそこにあった、多くの人を魅了した時間を感じる時、感動を共有できる芸術の殿堂が身近にある幸せをかみしめます。そんな時間がたまらなく好きなのです。 |