鳥取県民文化財団情報誌 アルテ
2009年1月
アルテとはスペイン語で「芸術・美術・技巧」などの意味で、英語では「アート」。アルテでは、県民文化会館をはじめ鳥取県内の文化施設のイベント情報を紹介しています。

観る 聴く 体験 親から子へのプレゼント

“本物の舞台芸術”ときくと、難しそうな響きがします。何だか敷居が高い気がして、ホールへ向かうのも二の足を踏みがちになりませんか? 一方で、子どもの頃から本物の芸術を観ることは、豊かな感性を養うとも言われています。難しいものが感性を育てるのでしょうか。いいえ、それだけではありません。幼児期というのが、一つのポイントのようです。
ご自身が声楽家であり、大学で幼児音楽教育を専門とされている鳥取短期大学教授白石由美子先生に、お話しをうかがいました。
インタビュー

今月の顔

白石由美子
●鳥取短期大学教授
●島根大学非常勤講師
●鳥取県文化振興財団理事
●日本音楽教育学会会員
●全国大学音楽教育学会会員
●鳥取オペラ協会副会長
2002年カウベルホールよりCD「からたちの花/白石由美子」をリリース。2007年、米子市文化ホールで東京弦楽合奏団(澤 和樹指揮)と協演。
著者
楽しくなる音楽講座
(ATN社/1991)
歌う、弾く、表現する保育者になろう
(音楽の友社/2006)
幼児音楽教育ハンドブック
(音楽の友社/2001)
等(いずれも共著)がある
現代の子どもたち
現代の子どもたちは、実体験をする機会が減っているように感じます。逆に、疑似体験が増えているのではないでしょうか。テレビゲームをする、自分でうたうのではなくテレビやCDから流れる曲を聴くといった機械を通しての体験です。また、環境も大きく変わってきました。歌をうたったり、絵本を読んだり、一緒に遊んだりと、昔は親子でやっていたことを今は幼稚園や保育園でやる機会が増えました。親と子で同じ体験をするという機会がだんだんと減ってきたように感じています。
幼児期とは?
人間の脳は、4、5歳で成人とほぼ同じ大きさになります。ちょうど幼児期です。幼児期というのは模倣期でもあります。子どもは模倣の天才です。繰り返しの体験で、さまざまなことを習得していきます。また、この時期の特徴として即興歌(そっきょうか)というものがあります。即興歌とは、自分で自由に作ってうたう歌のことで、幼稚園や保育園に通う年齢の子どもたちは、思いつくままに歌をうたうことが得意です。それに手や足の動きも加わります。それが小学生になると止み、今度は知っている歌や習った歌をうたうようになります。心と体で自由に表現できるのが、幼児期のよいところですね。
子どもは遊びや体験を通して多くのものを養っていきます。ですから、この時期に、一流のものを観たり聴いたりして感性を育てることは大切です。その時は難しくて分からなくても、いつか価値が分かる日がくるのではないでしょうか。
米子人生大学
「米子人生大学(※)」で講師を務めたことがあります。受講生の多くは50代から80代の方たちですが、とても意欲的で、こちらが驚くくらい多くの歌を皆さんがご存知です。現代の若者たちが全員知っていて、かつ全曲うたえるという歌はいくつあるのでしょうか。おそらく数えるほどではないかと思います。鳥取でなじみのある歌といえば、岡野貞一さんの「ふるさと」がありますね。1番なら歌詞を見ずにうたえる人は多いでしょう。でも3番までうたえるという人はぐっと減ってくるのではないでしょうか。「米子人生大学」を受講されている方々は、子どもの頃うたっていた歌をとても良く覚えていらっしゃって、数多くの曲を全員がおうたいになります。テレビがなく、娯楽の少なかった時代という環境も影響しているのでしょうが、小さな頃から同じ歌を繰り返しうたい、思いっきり自然の中で遊び、五感をフルに活用した子ども時代を過ごされたのだなと感じます。
※米子人生大学……とっとり県民カレッジ連携講座
 主催/米子人生大学友の会、米子市教育委員会
親から子へのプレゼント
人の音楽のベースになるものは、子どもの頃に聴いた音楽だと言われています。人間にとって究極の音楽は、母の歌(声)です。
親は、歌を上手にうたう必要はないのです。子どもと一緒にいろんな歌を繰り返しうたったり、絵本を読んだりも良いと思います。芸術に限らず、知っている草木や花の名前を教えてあげるといったことでも構いません。親が「きれいな夕陽ね」と言うことで、子どもが今まで気付かなかった夕焼けの美しさに気付くこともあります。親から子どもへと伝わっていくもの、親子で一緒に心地良い体験をしていくこと
――それが大事ではないでしょうか。
幼い頃に聴いたもの、体験したことは、その人の感性や感情を育て、表現の基礎になっていきます。この時期に、いかに多くの体験を子どもにプレゼントできるかが重要です。お子さんが興味を持っていなくても、一度一緒に公演に出かけてみるのも良いのではと思います。一緒に鑑賞して「楽しい、面白い、びっくりした」という体験、涙が出たという感動を、疑似体験で得ることは少ないでしょう。子どもと一緒に体験できる時期は案外短いものです。

3月に境港市民会館で開催する公演『11ぴきのねこ ふくろのなか』は、当財団の県民企画提案制度により「境港親と子どもの劇場」からご提案いただいた企画が実現したものです。そこで事務局長をされている川崎さんに、お話しをうかがいました。

今回、なぜクラルテの作品を選ばれたのですか?
「11ぴきのねこ」シリーズは、親世代が子どもの頃から読んでいた絵本で、今でも人気があります。また、舞台芸術を観たことのない子どもにとっても、入りやすい作品だと思います。親子で一緒に鑑賞し、感想を話し合ったり、観に来られなかった家族の人に話をしたりと、楽しみを共有してもらえれば嬉しいです。親が楽しいと、自然と子どもも楽しくなります。鑑賞を通して、生の舞台の楽しさを知って欲しいと思います。
親と子どもの関係づくりについて、お考えを聞かせてください。
個人的な意見ですが、現代は親子の関係が希薄になっている気がします。親が押し付けすぎると、子どもはストレスを感じます。そのストレスが爆発して、さまざまな事件へとつながることもあるのではないでしょうか。親は自分の考えを押し付けすぎず、子どもがやりたいことをバックアップできればいいと思います。情緒が育つといっても、ピアノや水泳といったお稽古事と違って、舞台芸術の鑑賞はすぐには結果がでません。すぐに結果が見えないものだという事を分かってくださる人が増え、親子で楽しみを共有する時間も増えれば良いと思います。
「境港親と子どもの劇場」事務局長 川崎直子
「境港親と子どもの劇場」は今年で15年目となる。生の舞台芸術の良さを小さな頃から知ってほしいという趣旨のもと、毎週水曜日、境港市の市民活動センターで活動中。
参加してみよう!!
年賀状企画 年賀状を書いて公演を観に行こう!
「ねこ」をテーマとした年賀状・イラストハガキを募集中。
応募された方の中から抽選で10組20名様を公演にご招待。
またハガキは当日公演会場ロビーに展示いたします。
参加方法:ハガキ裏面に手作りの年賀状・イラストを、表面にお名前、年齢、ご住所を忘れずに。
あて先・お問合せ先:〒680-0017 鳥取市尚徳町101-5
とりぎん文化会館「11ぴきのねこ」係
電話(0857)21-8700
ワークショップ
人形劇団クラルテの団員さんと一緒に人形劇で遊びませんか?
2009年2月1日(日)13:00〜14:30
2009年3月1日(日)12:30〜13:30
会場:境港市民会館 大会議室
募集対象:@親子40組(はさみを使える方)A親子20組
参加費:無料(電話にて先着順に受付)
申込先:とりぎん文化会館 電話(0857)21-8700 バックステージツアー
人形劇の秘密を探ろう!
公演終了後、舞台裏を見学してみませんか?
公演に使った人形や舞台装置を間近でみるチャンス!!
2009年3月1日(日)公演終了後(予定:15:40〜)※30分程度
会場:境港市民会館
公演を鑑賞された方は、
どなたでもご参加いただけます(無料)
詳しくは財団ホームページまで http://www.torikenmin.jp/zaidan/
読んでみよう!
原作の絵本
11ぴきのねこシリーズの紹介
作・馬場のぼる
出版 こぐま社
『11ぴきのねこ』 1967年
『11ぴきのねことあほうどり』 1972年
『11ぴきのねことぶた』 1976年
『11ぴきのねこふくろのなか』 1982年
『11ぴきのねことへんなねこ』 1989年
『11ぴきのねこどろんこ』 1996年
平成20年度文化庁 「舞台芸術の魅力発見事業」
人形劇団クラルテ『11ぴきのねこ ふくろのなか』
原作 / 馬場のぼる(こぐま社刊)
脚色 / 東口次登
演出 / 藤田光平
人形美術 / 永島梨枝子
舞台美術 / 西島加寿子
音楽 / 一ノ瀬季生
2009年3月1日(日)
開場13:00 開演14:00
会場:境港市民会館
チケット(全席指定):
おとな:2,500円(2,000円)
高校生以下[4歳以上]:1,000円(900円) 
※( )内は財団友の会・団体10名以上料金
※3歳までのお子様の膝上での鑑賞は無料ですが、お席が必要な場合は有料となります。
プレイガイド:
【西部】境港市民会館、ビッグシップ、本の学校、米子市児童文化センター
【東部】とりぎん文化会館
【中部】倉吉未来中心
【県外】しまね文化情報コーナー、プラバホール、今井書店(安来プラーナ店・学園通り店)
共同主催:(財)境港市文化福祉財団、文化庁
託児サービス(無料・要予約・定員あり)申込締切 2/15(日)
お問合せ先:とりぎん文化会館(0857)21-8700

| 目次にもどる| バックナンバー|

| 県民文化会館ホームページTOP | 鳥取県立倉吉未来中心ホームページTOP | 鳥取県文化振興財団ホームページTOP |