- ●鳥取短期大学教授
●島根大学非常勤講師
●鳥取県文化振興財団理事
●日本音楽教育学会会員
●全国大学音楽教育学会会員
●鳥取オペラ協会副会長
- 2002年カウベルホールよりCD「からたちの花/白石由美子」をリリース。2007年、米子市文化ホールで東京弦楽合奏団(澤
和樹指揮)と協演。
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楽しくなる音楽講座
(ATN社/1991) |
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歌う、弾く、表現する保育者になろう
(音楽の友社/2006) |
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幼児音楽教育ハンドブック
(音楽の友社/2001)
等(いずれも共著)がある |
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- 現代の子どもたちは、実体験をする機会が減っているように感じます。逆に、疑似体験が増えているのではないでしょうか。テレビゲームをする、自分でうたうのではなくテレビやCDから流れる曲を聴くといった機械を通しての体験です。また、環境も大きく変わってきました。歌をうたったり、絵本を読んだり、一緒に遊んだりと、昔は親子でやっていたことを今は幼稚園や保育園でやる機会が増えました。親と子で同じ体験をするという機会がだんだんと減ってきたように感じています。
- 人間の脳は、4、5歳で成人とほぼ同じ大きさになります。ちょうど幼児期です。幼児期というのは模倣期でもあります。子どもは模倣の天才です。繰り返しの体験で、さまざまなことを習得していきます。また、この時期の特徴として即興歌(そっきょうか)というものがあります。即興歌とは、自分で自由に作ってうたう歌のことで、幼稚園や保育園に通う年齢の子どもたちは、思いつくままに歌をうたうことが得意です。それに手や足の動きも加わります。それが小学生になると止み、今度は知っている歌や習った歌をうたうようになります。心と体で自由に表現できるのが、幼児期のよいところですね。
子どもは遊びや体験を通して多くのものを養っていきます。ですから、この時期に、一流のものを観たり聴いたりして感性を育てることは大切です。その時は難しくて分からなくても、いつか価値が分かる日がくるのではないでしょうか。
- 「米子人生大学(※)」で講師を務めたことがあります。受講生の多くは50代から80代の方たちですが、とても意欲的で、こちらが驚くくらい多くの歌を皆さんがご存知です。現代の若者たちが全員知っていて、かつ全曲うたえるという歌はいくつあるのでしょうか。おそらく数えるほどではないかと思います。鳥取でなじみのある歌といえば、岡野貞一さんの「ふるさと」がありますね。1番なら歌詞を見ずにうたえる人は多いでしょう。でも3番までうたえるという人はぐっと減ってくるのではないでしょうか。「米子人生大学」を受講されている方々は、子どもの頃うたっていた歌をとても良く覚えていらっしゃって、数多くの曲を全員がおうたいになります。テレビがなく、娯楽の少なかった時代という環境も影響しているのでしょうが、小さな頃から同じ歌を繰り返しうたい、思いっきり自然の中で遊び、五感をフルに活用した子ども時代を過ごされたのだなと感じます。
※米子人生大学……とっとり県民カレッジ連携講座
主催/米子人生大学友の会、米子市教育委員会
- 人の音楽のベースになるものは、子どもの頃に聴いた音楽だと言われています。人間にとって究極の音楽は、母の歌(声)です。
親は、歌を上手にうたう必要はないのです。子どもと一緒にいろんな歌を繰り返しうたったり、絵本を読んだりも良いと思います。芸術に限らず、知っている草木や花の名前を教えてあげるといったことでも構いません。親が「きれいな夕陽ね」と言うことで、子どもが今まで気付かなかった夕焼けの美しさに気付くこともあります。親から子どもへと伝わっていくもの、親子で一緒に心地良い体験をしていくこと
――それが大事ではないでしょうか。
幼い頃に聴いたもの、体験したことは、その人の感性や感情を育て、表現の基礎になっていきます。この時期に、いかに多くの体験を子どもにプレゼントできるかが重要です。お子さんが興味を持っていなくても、一度一緒に公演に出かけてみるのも良いのではと思います。一緒に鑑賞して「楽しい、面白い、びっくりした」という体験、涙が出たという感動を、疑似体験で得ることは少ないでしょう。子どもと一緒に体験できる時期は案外短いものです。
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