他県でも戯曲講座を受けましたが、昨年度の鳥取県の戯曲講座は特別でした。それは、講師が劇作家でなく演出家である点、見学者がいるという点です。講師である西川信廣(にしかわのぶひろ)氏(劇団文学座・演出家)は演出家の視点でアドバイスをなさいました。上演した場合、どんな効果や不都合があるか、どう見せていくのかというご指導だったと思います。
またこの戯曲講座は、選ばれれば上演されることが前提でした。それがあったから受講生全員が作品を完成させられたと思います。毎晩机の前で苦しんで書いた言葉を俳優の方が自分の身体で表現してくれるというのは、書く人間にとって最大の喜びです。書くのは孤独な作業ですが、それが多くの人に広がっていく喜びを持たせていただきました。
プロの演劇人としての論理的かつ直感的な鋭さを感じました。「この流れでこの台詞が出てこないのはおかしい」とか「こういう言い方はしない」など、微妙な違和感を与えている原因をピンポイントで指摘されました。古城さん自身には、譲れない人間観や戯曲観をお持ちの方だと感じました。しかしそれを押しつけるのではなく、私自身のそれらと対峙させようと働きかけてくださいました。私が力不足でなかなか対決までに至らないのですが、こちらの劇作観が揺さぶられて、大変勉強になりました。
今まで教師の世界を書いたことはありません。それは自分が教師なのでいろんな意味で誤解されるのでは(笑)と思ったからですが、古城さんから「教員の世界はおもしろいよ」と背中を押されました。題材として指定のあった「昭和30〜40年代の鳥取県で起こった出来事」のうち、昭和47年の大山国体とその前日に起こったあさま山荘事件が引っかかりました。華やかな国体と時を同じくして陰惨な事件が起こっている。活気あふれる高度成長の裏で個人がどう生きようとしたのか、また生きられなかったのか、そこが描けたらと思いました。未熟な戯曲ですが、古城さんにどのように演出していただけるのか、本当に楽しみです。 |