鳥取県東部には、鳥取砂丘から奥丹後半島までの長さ約75kmに及ぶ海岸線を中心に指定された山陰海岸国立公園があります。この公園を代表する海岸景観の一つが浦富海岸です。浦富海岸は、岩美町大谷から兵庫県との県境・陸上岬までの約15kmの海岸線です。
その景観は、「山陰の松島」と呼ばれ、白砂青松の砂浜は大変美しく、日本海の荒波による海食や風食によってできた奇岩、洞門、断崖絶壁が点在しています。
昭和3年に「国の名勝及び天然記念物」に指定され、この指定調査に関わったのが、漢詩人で歴史地誌学者である国府犀東(こくぶさいとう)※です。
※国府犀東…1873年〜1950年
金沢市生まれの漢詩人・歴史地誌学者。内務省(当時)の天然史跡名勝記念物保存委員
大正15年に史蹟名勝の調査のために浦富を訪れた国府犀東が、浦富海岸の風光を称えて作った漢詩の連作が、「浦富海巖勝区八景詠」です。
この漢詩は、序詩を含め、9つの詩で構成されています。
帰帆(きはん)、晴嵐(せいらん)、夕照(せきしょう)、秋月(しゅうげつ)、晩鐘(ばんしょう)、落雁(らくがん)、暮雪(ぼせつ)、夜雨(やう)という8つの要素で八景が詠われており、14世紀に中国から伝わった瀟湘(しょうしょう)八景の風景画を起源とした風景鑑賞の方法が取り入れられています。
日本各地の景勝地でも基本的にこの8つの要素によって八景が描かれ、詩歌に詠まれています。
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