鳥取県民文化財団情報誌 アルテ
2008年3月
アルテとはスペイン語で「芸術・美術・技巧」などの意味で、英語では「アート」。アルテでは、県民文化会館をはじめ鳥取県内の文化施設のイベント情報を紹介しています。

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 劇場はただ単に良質な舞台を鑑賞する場ではありません。鑑賞者をはじめとする利用者の方々や文化芸術に馴染みのない方に、劇場でどのように楽しい経験をしていただくか、ということが重要なのです。例えば、(1)会社で嫌なことがあり自信をなくしている会社員の方が県民文化会館のフリースペースにフラッとお越しになったとしましょう。ちょうどそのとき自由空間音楽会のコンサート中であった。そこに疲れてボロボロになった気持ちを慰めてくれるような優しい音楽が流れてきた。自信をなくした心にヴェルディの歌劇アイーダの凱旋行進曲が流れ勇気づけてくれた。このような経験がたまたま訪れた会館で起こったとしたらどうでしょう。たぶん、その会社員の方は、何もわからないクラシック音楽であっても何かを感じ、生き方や仕事について考え直し、元気や勇気をもらうことができたのではないかと思うのです。「生き方=芸術体験」が劇場という空間で初めて結びつく、そこで初めてクラシックっていいなぁ〜、文化芸術ってすごいなぁ〜と感じ始めます。鑑賞とは何気ない、ささやかな、それも極めて個人的な経験により、鑑賞行動に発展していくのです。ですから、鑑賞を提供する側はそのような個人的な体験機会が生まれるよう、なるべく多くの機会を作ってあげること。単に鑑賞すると言うことに止まらず、劇場で素敵な体験や経験ができるようなしかけを取り込むと言うことが重要なのです。例えば、(2)昨年国本武春という若手浪曲師の公演がありました。壊滅的な浪曲のマーケットに対し事業担当者は果敢に挑戦、チラシには当日鑑賞者に楽しんでいただけるようないくつかの仕掛けを施しました。「着物でのご来場大歓迎!」「掛け声はこれで大丈夫! (1)待ってました! (2)たっぷり! (3)名調子! (4)日本一! これであなたも浪曲ツウ!」その他アーティストの県外出演情報や公式Webなどなど。チラシを初めて手にした人たちに浪曲の面白さや当日来場したらもっと面白いことが起きることを期待させるような内容を満載したのです。実際、当日来場されたお客様はこのチラシの通り、着物を召された方もあれば、掛け声を繁盛にかけ、存分に「観て聴いて楽しんで」という鑑賞体験をされました。このような鑑賞体験をどのように提供していくか、この創意工夫の積み重ねが必要だと思います。

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