文化芸術を拒絶される方や抵抗を示す方々は別として、文化芸術に触れてみたいがその機会を逸している方やなかなか鑑賞行動に踏み切れない引っ込み思案型の方、いわゆる潜在的な鑑賞者=眠っている鑑賞者は多いと思われます。その方々に対してどのようなアプローチで鑑賞行動に結びつけるかは事業推進者や広報マーケティング担当の力量にかかってくるわけですが、眠っている鑑賞者を目覚めさせるのは容易なことではありません。「劇場は街の広場」であるというのが私の持論ですが、平成16年から始めた自由空間音楽会は、そのコンセプトの元、日頃あまり文化芸術に触れたことのない県民の皆様にクラシック音楽の素晴らしさを身近に感じていただこうと無料で行っている事業です。閑散とした公立文化会館に人と人との交流を促し、生活の中に文化芸術を感じていただきたい! その切なる思いからスタートしました。貸し館業務と育成創造事業の二面性を持つ公立文化会館には大きく分けてふたつのタイプの利用者の方々が存在します。会議棟を利用される方の多くは、この会館が地域文化の創造発信拠点であるということをあまり認識しておらず利用されておられます。お弁当を食べながらでもよい、会議の準備をしながらでもよい、通りすがりでもよい、なんらかの形で昼のひとときをクラシック音楽で豊かに過ごしてほしいと願っています。年間10回程度のコンサートを開催していますが、今ではこの音楽会を楽しみに来られるお客様が毎回150名を超えてきました。この中に潜在的な鑑賞者がどれくらいおられるか皆目見当が付きませんが、その方々がクラシックファンになり、県民文化会館の愛好者になり、いつの日かチケットをお買い求めいただいて鑑賞して下さるまで、本事業を続けていく努力をしなくてはなりません。このような地道な事業こそ公立の文化施設が実施して行かなくてはならない事業ミッションのひとつだと考えています。地域の文化度は鑑賞者の質で決まるともいいます。持続的な鑑賞者と新しい鑑賞者の開発が喫緊の課題です。 |
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