古典芸能の稽古は基本的にはマン・ツー・マン。口伝口述による指導方法が大方ですが、高校生のとき、五線譜で三味線を弾くことができることをはじめて知ったときには、かなりのカルチャーショックを受けたこと覚えています。「縦譜」と呼ばれるスコアーは「研精譜」といって東京芸術大学邦楽科が用いており、1から7までの数字にドからシの音階をあて、古典曲を弾くものです。また、現代邦楽の場合には、五線譜そのものを読みながら、独奏曲から多編成の合奏曲まで弾くことができます。和楽器によるオーケストラ・アンサンブルを勉強できたのも、和楽器を科学的かつ体系的に訓練できたのも、この五線譜のおかげでした。ご存じのように邦楽演奏には指揮者はおりません。指揮者やコンサートマスターの役割を果たす役目は、「立て唄」と「立て三味線」が務め、長唄に沿って「息」や「間」で曲を進めていくわけです。一方、五線譜の楽曲の場合には西洋音楽の理論や要素を理解し、尚かつ邦楽器の特性を充分に活かしながら演奏しなければならないとい | |