鳥取県民文化財団情報誌 アルテ
2007年4月
アルテとはスペイン語で「芸術・美術・技巧」などの意味で、英語では「アート」。アルテでは、県民文化会館をはじめ鳥取県内の文化施設のイベント情報を紹介しています。

文化立県のこれから
 鳥取県文化振興財団は平成16年度より「改革の基本方針」をもとに、県民の皆様にとって、より良い作品の鑑賞の機会の提供、地元文化の育成とレベルアップなどを推進し、約3年が経過しようとしています。平成18年度からは指定管理者制度が導入され、より一層のサービスの質の充実とコスト削減による会館経営が求められています。そのような状況の中、これからの鳥取における文化振興について、当財団の果たす役割やミッションについて改めて確認し、また変革の時代の財団運営ついて、理事の方々よりそれぞれの立場から語っていただきました。

文化立県鳥取の目指すもの、その一役を担う財団に期待することを教えてください。
青木由行 氏 あおきよしゆき 鳥取県文化観光局 局長  文化立県とは、県民の皆さんが文化や芸術を生活にもっと取り入れることで鳥取の良さを再発見し、生活の質を向上させることだと考えています。そのための文化行政を進めるうえで、財団は必要不可欠な存在です。文化行政を支える専門集団として専門性と継続性をもって、取り組みの成果を県民の皆さんに還元していただきたいと思います。また、県が行う文化行政と財団の事業がセットで県の文化行政が構成されると考えています。現場からの文化行政に対する提案、意見を求めたいし、時には、県と対峙することがあってもいいと思います。
財団の西部拠点館がないなかで、西部地区の文化振興の推進について、コンベンションセンターとどのように連携を深めていけばよいか、ご意見をお聞かせください。
長谷川泰二 氏 はせがわたいじ 財団法人 とっとりコンベンションビューロー 専務理事  総合芸術文化祭などを通して、西部の人々の意識にも変化が出てきたように感じています。皆さん拠点館の有る無しに関わらず、志を共にする人々と作品を創り上げていく喜びを共有するために取り組んでいます。これからは、その成果として何が残るか、ということが重要です。コンベンションセンターとの連携についてですが、指定管理者制度導入により働く職員の意識も変わり、県民の皆さんがコンベンションセンターに慣れ親しむような事業が増えてきました。そういった事業との連携をうまくとりながら進んでいけばいいのではないかと考えます。
理事に就任して1年が経過するなかでの感想、また財団運営や文化事業の推進についてお聞かせください。
田中仁成 氏 たなかきみなり 新日本海新聞社 編集制作局長  私は、これからの時代、地域には個性が必要で、そのためには地域の文化を大切にしなければならないと感じて、理事を引き受けました。新聞においても社会面や経済面もさることながら、これからは文化面も注目されています。文化に親しむ人をいかに増やしていくか、ということが重要なポイントです。これからいわゆる団塊の世代が退職し、一斉に企業から地域に戻ってきます。こういったメンバーに文化の担い手になってもらうことを期待します。例えば文化に関わる人々の人材データバンクを構築し、財団はそのコーディネートをする、というような中高年の世代と文化を繋ぐための仕掛けがあってもいいと思うのです。
青少年郷土芸能の祭典に第1回目から関わったご経験を踏まえた財団の文化事業に関してのご意見、また、職員との関わりが理事の中で一番長く深いことから、この数年の職員の変化について感想をお願いします。
梅津洋子 氏 うめづようこ 鳥取県文化団体連合会会長  来年度で5回目となる青少年郷土芸能の祭典ですが、当初は実行委員会も手探りの状態で動き始めました。しかし非常に生き生きとした表情で取り組んでいる子どもを見て、そこから力を得て大人もがんばり始めたのです。体験を通して全員が変化していくこと、そういったことが文化事業には必要なのではないでしょうか。今も、県内各地で活動する皆さんの意識の向上、また実践による変化が広がりをみせています。また財団の職員の皆さんについてですが、いつ来ても笑顔が絶えない職場ですね。職員の笑顔をみると、今やっている活動を続けていくことが大切であると感じますし、郷土芸能の祭典での舞台も、そういった職員が一緒に取り組んでくださったおかげで成り立っているのだと思います。
ディスカッション
【柴田】
 指定管理者制度のもと、これから財団は県の文化行政と対等な形でパートナーシップを組むことが必要だと思いますが、次の指定管理者となるためにどういったことをしていくことが大事だとお考えですか。
【青木理事】
 指定管理者制度には、一般的に雇用の短期化リスクという副作用が内在していますが、説明責任、透明性が求められること、受身ではなく自己提案できる自由度が増すことなどプラス面もあります。指定管理者制度に移行したことを前向きに捉えて、自由な発想のもと、現場のニーズを汲み取った提案をして欲しいと思います。
【柴田】
 田中理事はどう思われますか。
【田中理事】
 人的なネットワークが重要だと考えます。私の立場から見る限り、財団は情報や企画などを仕入れることは得意ですが、販売するということが苦手なのではないかと感じています。うまくネットワークを利用し、今まで不得手だった経済界などにも積極的に足を運ぶ必要があると思います。
【柴田】
 最近の傾向として、ホールの中でかしこまったコンサートを聴くことよりも、もっと、すぐそばで感じられるような環境の中でコンサートを楽しむという流れがあるように感じていますが、長谷川理事はどう感じていますか。
【長谷川理事】
 生活の中に文化芸術を取り入れて楽しむ方が増えてきています。そういったコンサートのチケットはすぐに売り切れてしまうくらいに皆様楽しみにされていますね。
【梅津理事】
 今の時代、一緒に歌ったり演じたりすることを通して喜びを分かち合うことが求められているのではないでしょうか。我々自身もその方向に視点を変えていくことが必要ですよね。
【長谷川理事】
 街の人々と話をしながら、人的なネットワークを広げて色々なものを創造していくことが求められていますし、職員の意識も変化してきています。
【青木理事】
 そこには成功も失敗もありますが、そこから現場のニーズが見えてきますよね。職員も指名指定を守ることを意識しすぎず積極的に仕事を楽しんで欲しいと思います。
【田中理事】
 文化や芸術を通して地域の役に立ちたいと思っている人々や企業は、私たちが思っているよりずっと多いです。そういった方々と財団とのパイプをつくっていくことも必要だと思います。


職員に対するメッセージ
勇気をもって色々なことを提案してもらいたいと思います。そうすることによって現場にも強くなると思います。【青木理事】
苦手な分野である営業活動にチャレンジして苦手意識を克服していってもらえば、と思います。その中で人的ネットワークを構築してください。【田中理事】
能動的に仕事に取り組んでください。そして、まわりの人に信頼され、当てにされるような人間になってください。【長谷川理事】
やりたいことが未消化にならないように、人的ネットワークを活用して財団の仕事を創っていってください。
【梅津理事】

司会進行 柴田英杞 しばたえいこ 財団法人 鳥取県文化振興財団副理事長文化芸術デザイナー      オブザーバー 藤野浩二 ふじのこうじ 財団法人 鳥取県文化振興財団企画制作部 制作・学芸課長

  ◆改革の基本方針を推進してきた感想と、これからの抱負
 改革の基本方針を策定したことで、財団の目指すべき方向が明確になりました。それにより職員の意識が変わってきたと感じています。以前は鑑賞公演が中心だったのですが、現在は育成・創造事業にも力を入れています。また、今回皆さんのお話を伺い、事業を推進していく上で発想の転換も必要だということに改めて気がつきました。【藤野】
 


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