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「実るほど頭をたれる稲穂かな」という川柳があります。稲穂が実れば実るほど頭を重たくして垂れていくその様を、トップの心構えに関する戒めとしてうまく表現しています。たとえ地位を得たとしても驕り高ぶることなく、謙虚な姿勢で人に接し、真摯に仕事に取り組めという心得だろうと思います。この教えを毎日の実践の中で行動に移しながら仕事に精進し、トップとしての力量を鍛え、精神的な器を深く大きくしていくことなのでしょう。トップに限らず、人には「人徳」というものが必要だと思うのですが、特にトップには不可欠な資質だと考えます。もし万が一「徳」が具わっていないのであればトップの座についてはならないと思いますし、人間として未熟なのであればその「徳」を積むということを怠ってはいけないと思うのです。辞書によれば、「徳」とは正義・人道にそった行為をすること。人を敬服させ感化する力や人から慕われる人柄であるといいます。「徳」のある人は必ず他者の支持を得ることができるということです。人から信頼され、尊敬され、愛される存在にならなければトップは務まらないということです。よって、誰にでもできるという職ではないということが言えますし、逆から言えば、職がトップという人材を育てるという見方もありましょう。しかしながら往々にしてこの「人徳」をもてない方がトップの座を欲しがるというケースが見受けられます。「人徳」のないトップの元で働く部下はとても不幸です。ですから、トップたるもの仕事の実力もさることながら、人間を磨き「徳」を積むということを決して忘れてはいけないと思います。このことは変革の時代に限ったことではありませんが。
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